拙者の誕生日でござるか?
昨日でござるよ。


その衝撃といったら無かった。


「恋人になって初めての誕生日、少しくらいお祝いしてやってもいい。」
真っ赤に染めた顔と、3秒前の台詞を返せと思った。
ツンツンツンツンデレの、珍しすぎるデレだったのに。


一年後、河上万斉は後悔する事になる。


それはそれ、これはこれ


「おめでとう、河上。」


その声とともに目を開ければ、河上の前には恋人が居た。
ドアップのそれにすこしびっくりする。
だが、それをおくびにも出さないのがこの男だ。


しかし、河上にはなぜ自分が恋人の山崎におめでとうなどといわれているか見当もついていなかった。
寺門通のCD売上の話ならわざわざ自分にしてこないだろう。(寺門は河上すら知らない山崎の仕事用携帯の番号を知っている。)
逆に鬼兵隊の話なら怒鳴られているところだ。


「ありがとうでござる…して、拙者は何かいいことでもあったでござるか?」


少しだけずれた返事をしながら、河上は山崎を抱きとめようと手を持ち上げる。
いや、持ち上げようとした。
縛られた手首はぴくりともせず、目の前の山崎は珍しく上機嫌だ(この恋人はとんでもないツンデレで、河上の前ではいつも不機嫌だ)。


「しっかり縛ってあるだろ?絶対外れないからそれ。」
「なら退殿が外してくだされ。」
「や。」


いくら力を入れても外れないそれに、河上は山崎の職業を嫌と言うほど思い出す。
監察と言うのはこうやって拷問するのも仕事だしね、と。
少しだけ目を伏せた彼を思い出す。


まさか、まさか。


河上の脳内には最悪の情景が思い浮かび、そして消えた。
山崎の表情が、河上にしか見せないそれだったからだ。
どこかの一番隊隊長様や、どこかの鬼畜上司のような、人を傷つけてからかうのが楽しくてしょうがない瞳。
いつもは地味に徹している青年の、河上しか知らない素顔である。


「何ゆえに拙者はこんなことになってるでござるか?」
「ん?わかんない?」
「すまないが、見当もつかない。」
「じゃ、今日一日このままな。」


河上が少し甘えた声を出しても、山崎は一向に動こうとしない。
しょうがない、と思いつつも河上は最終手段を使うことにした。
あんまり、使いたくは無いのだが。


「今日はお通殿の取材が入っているでござるよ。はずしてくれぬと困る。」


山崎の顔が、それを聞いた瞬間凍った。
「嘘は良くないよ。今日はやすみ、だろ?」
河上の額に汗が流れる。


「なぜそれを…」
「お通ちゃんが教えてくれたんだ。」
「むぅ…」


河上は、足りない脳味噌で考える。
今日は、5月の20日。
退殿の誕生日は2月だし、恋人記念日は7月だし、副長殿の誕生日は5日で…


「…拙者の誕生日?」
「やっと思い出したか馬鹿。」
「去年の、というと…?」


「じ、事後報告とかありえないじゃん!」


一応、恋人なのにさ。
山崎のわがままを久しぶりに聞いた河上は、山崎を力いっぱい抱きしめる。
荒縄は、力に任せて引きちぎった。


「ちょ、放せって!」
「いやでござるぅー。今日は拙者の誕生日でござるぅー。」
「それはそれ、これはこれだろ!放せ、ちょ、あ、どこ触って…」


河上が机の上の花束に気がつくのは、次の日のお話。








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河上万斉お誕生日お祝いwebアンソロ、夢見鳥様に出させていただきましたモノを手直しした物です。
相変わらず毎回訂正がでる自分が嫌になります。


さて、河上万斉の誕生日が始まりましたよーっ!!
ってことで、エイプリルフールでもないのにやらかしてる馬鹿ですが。
一回こういうのやってみたかったんですよ。


しかし、思い立ったのが副長様の誕生日3日後。
それも、小説なんか一本も書けて無いのに。


とりあえず万斉攻めは好きなので頑張って書こうかなって思います。
さぁ当日どれくらいの小説があがっているのでしょうか…


つーか。
勝手に河上をAB型にしてすみません!
ほら、某J事務所の報道グループ様の歌であったじゃないですか。


「AB ツンデレプロデューサー」
って!!!!!





すみません一回死んできます