ごめんなさい。
ごめんなさい。
あなたをあいしてごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
あなたをこわしてごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
あなたをふこうにしてごめんなさい。
堕ちた二人羽織
雪の中を、二人で歩いた。
さく、さくと小気味いい音を立てつつ、足跡が残る。
土方はたまに振り返ると、歩みを止めずにただ歩いている。
山崎はこの状況を楽しんでいるのか、普段はすぐ後ろに居るのに今日は10歩以上離れて歩いていた。
近年稀に見る、大雪だったらしい。
山崎はそのことを自分たちの事が流れたラジオ番組で知った。
模倣犯すら出ないような大量虐殺事件の後に、ほのぼのとした報道。
世の中は幸せなのだな、と思ってしまった。
山崎は、あの一件以来少しおかしい。
山崎の幸せとは、土方そのものであったし、彼の幸せは山崎にとって賛美に値するもので。
この世の正解とは土方で、それ以外は間違いであるのだ。
この論理は未だに山崎の中では不動である。
だけど、不意に思い出す。
自分がやっていることは、彼の幸せではないのかもしれない。
もしかしたら、自分はとんでもない失態を犯してしまったのではないか。
彼の幸せが平和な中に存在したとしたら、山崎はその障害物以外の何者でもない。
わざわざ茨の道を歩かせなくとも、彼が幸せだとしたら。
俺は、どうしたら良いのだ、ととめどなく考えている。
土方自身も、内容まではわからないが、山崎が悩んでいることに気が付いていた。
そして、土方もあのニュースを聞いたのだ。
車をすこし路上に置くと、土方は純白の世界へと山崎を誘った。
「おい、置いていくぞ。」
「待ってください、綺麗ですよ副長!」
「あぁ、そうだな。」
自分の足跡を、一ミリも外さずに上を歩く山崎は、久しぶりにご機嫌だった。
ほっとした自分をたしなめて、土方はまた歩き出す。
山崎の幸せが、自分の幸せだと気が付いていたから、歩き出す。
山崎が隣で笑っていれば、ほかに何も要らないと思っていた。
だけど、命日の日、暴れだした山崎を止めようとして、たかが外れてしまったのだ。
いきなり気絶させられて、起きたら真選組は全滅で。
どこに行きたいか聞かれて、答えてしまった。
土方自身も殺してほしかったのだが、山崎はそれを勘違いしたらしい。
世界を土方のものに、と、刀を振るっていた。
茫然自失としていた土方も、とうとう腹をくくったのだ。
山崎を幸せにするためには、自分が世界を手にいれなければならないと。
刀を振るって振るって、血に染まって、山崎に綺麗といわれ。
そこで気が付いた。
二人で逃亡生活を始めて、山崎は血の色以外を綺麗といわなかった。
血にまみれた土方を見てしか、綺麗といわなかった。
さっき、やつはなんと言った?
「そんなに雪は綺麗か?」
土方が問いかけると、山崎は歩みを止めた。
きょとん、と目を丸めて、さぞ当たり前のように言う。
「違いますよ。雪の中に居る副長が綺麗なんです。」
どこまでさかのぼれば、間違いに気が付くのだろうか。
土方はただ笑う事しか出来なくて、泣きながら山崎を抱きしめる。
その背に手を添えて、山崎は愛してますと呟いた。
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とうとう気が付きました。
これ書いたの8月です。
汗だくになりながら冬の話書いてました。
水菜