四次元




彼も、この人を綺麗だといっていた気がする。
舞いでも舞っているかのようなその、動き。
普段からは想像もつかないほどの、真剣な瞳。


かわいらしい顔なのに、きっと彼はどこかで踏み間違えたのだろう。
それは、近藤と出会ったときなのか、それとも、土方と出会った時なのか。
はたまた、生まれた時からか。


しかし、道を踏み外したといえば、自分の上司もそうなのだ。


今、僕が真選組の一番隊長と向かい合っているのは、全てその上司のためなのだから。
彼は早々に我々を見捨て、万斉と一緒に土方を殺しに向かった。


自分が最も敬愛する人間は、自分の最愛の人間の、最も敬愛する人間を、殺しに行ったのだ。









このことは、二人には簡単に予想が付いていた。


「いつだろうね。」


山崎が不安げに言ったこの日を、篠原は忘れたことがない。
それが、あまりにも儚く、そして、残酷だったから。


「そろそろだと思います。伊藤先生も動き始めましたし。」
「そっか。副長は局長の指示がないと動けないからイライラしてるよ。」


睨み合っている上司を持つ、恋人同士だった。
どちらから好きになったとか、そんなことは覚えていない。


ただ、篠原にとって山崎のその忠誠心は尊敬に値し、なのに抜けているのがとてもかわいらしかったのだ。
ただ、山崎にとって篠原のその忠誠心は尊敬に値し、なのに自分には甘いところがくすぐったかったのだ。


しかし、篠原は自分の上司を止められない。
しかし、山崎は自分の上司を止められる。


「…多分、相当な迷惑をかけると思います。」
「珍しい。しのからそんな言葉が出てくるなんて。」
「今回こそは、俺の不注意としか言い様がないんですよ。」


作戦が決行されるのは、明日。
そして、明日は、自分の敬愛する先生、もしくは、彼の敬愛する副長の、命日なのだ。


すなわち、それは、自分達どちらかの命日が明日であるということを暗に示している。


自分達は、そういうものなのだ。
自分の敬愛する物の死は、自分の死と直結する。
自分達にとって、彼らは、必要不可欠なのだ。


それは、恋人を殺してでも。


「儚かったねぇ、ここまで。」


山崎が、ほんのりとため息をついた。
そこには、哀しみと言う感情が一切含まれていない。
ただ、自分の上司が生き残るという自信しかなかった。


「やだな山崎さん。まるで明日僕が死ぬみたいな言い方じゃないですか。」
「あ、そう聴こえた?」
ならよかった。


「だって、副長は死なせない。もし、しのが副長を狙ったら…」
相打ちだ、多分。


監察として…忍びとしての二人の実力は大体同レベル。
侍だと単純な斬りあいなので、勝負は一瞬でつく。
しかし、しのびは毒を使う。


同じ力量の者が戦えば、それは相打ちを意味するのだ。


「先生だって殺させませんよ。」
「ふふ、そう来なくちゃ。」


朝が始まる。
どちらともなく、布団の中で手を繋いだ。


顔は二人とも逆を向いている。
ないてるのなんか、ばれないだろう。







物思いにふけっていると、伊東派で立っているのはすでに僕だけになっていた。
沖田隊長と、目が合う。


「もう一つだけ、篠原には特別に教えてやりまさぁ。」


二人とも、刀を構える。
この戦は、負け戦だと知っていた。
だから、沖田は殺さない。


きっと、山崎さんが、寂しがるから。


「死んだ後には、ただっぴろいだけの世界があるらしいですぜ。だから。」



一生そこで山崎探してな。



まるで自分が山崎さんを連れて行くかのような沖田隊長の言い方に、僕は笑うしかなかった。


「やだなぁ、沖田隊長。山崎さんは、退さんは……死んだって副長の隣に居ますよ。」

















最後に流した涙は、山崎さんのためじゃない。

けっしてこっちを見なかった、山崎さんのせいじゃ、ない…!!












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全然四次元じゃねぇな。
インフル中出筆第1弾です。

いつも以上に支離滅裂だな。
つか、そごたんドS。