背比べ
柱に刻まれたのは、二人の友情の証。
小さい頃から、二人は仲が良かった。
それは総悟が彼を年下と勘違いしていたことと、退が自分が近藤より年上であることを黙っていたからに他ならない。
他にも、退が総悟に対して敬語だったことが理由になるが、そんなものは小さい物だ。
20歳の退と、12歳の総悟。
事情を知ってみる者から言わせれば犯罪まがいのそれも、全く状況がわからない人間が見るとほほえましい姿にしか写らなかった。
「おい退。背比べってしってますかぃ?」
そんな道場には、今日も二人の笑い声が響く。
「知ってますよ。…そういえば俺、沖田さんと背比べしたこと無いですね。」
「そうでさぁ。だから、今からする。」
退の手を握り、総悟はぱたぱたと走り出す。
こんな弟が欲しいな、なんて二人して思っている。
そして総悟が手ごろな柱を見つけ、退がポケットからクナイを出す。
「これにしやしょう。」
「はい、じゃあ沖田さん、ここに立って。」
がりがり、と柱に跡を残す。
ここが土方の部屋なのは、二人とも重々承知である。
でも、二人でなら怒られてもいいな、なんて二人して思っている。
「今度は退でさぁ。」
「はい。」
かりかり、と先ほどよりもか弱い音が響く。
これが土方の目に付きやすいところにあるのは、二人ともわかっていない。
まぁ、なんとかなるだろう、なんて二人して思っている。
「退のほうが大きいですねぇ。」
「まぁ、しょうがないでしょう」
悔しそうな顔をした総悟の頭を、退は撫でてやる。
しかし、自分の方が年上であるとある意味自己中心的な勘違いをしている総悟には、それは馬鹿にされているとしか思えなかった。
ぱし、と乾いた音がする。
退がびっくりすると、総悟は下を向く。
少し、やりすぎたかな、なんて二人して思っている。
「お、俺が、退より、大きくなったら。」
「はい。」
「俺が、お前のこと、貰ってやりまさぁ。」
「…ありがとうございます。凄い嬉しい。」
すこし、恥ずかしいかな、なんて二人して思っている。
柱に刻まれたのは、二人の愛の証。
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短っ!!!
これ、以心伝心の方が良かったんじゃないかなんてだれも思っていないです。
思ってないですってばぁ!!!