こちらをむいて、こちらをむいて。
あいじょうのはんたいは
むかんしんなのねぇきがついて

おれ、あなたのためなら、せかいすらうばってみせる
じぶんもいらない
いっしゅんでいい、こちらをむいて。











狂った二人羽織




山崎がおかしくなった。
もともとおかしかったのだが、ここ数日はひどい。
今日だって、いきなり俺に聞いてきた。


「せかいをじぶんのものにするには、どうしたらいいのでしょうか?」


いままでにも、あった。
「あいじょうのはんたいって、なんなんでしょうね?」や、「どうしたらあのおんなをもやせるのでしょうか?」なんて答えがあるものはましな方で。
「どうしておれはここにいるのですか?」「おきたさんはどうしてうまれたんですか?」「なんでおれはふくちょうなんかがすきなんでしょう?」と、答えなんか出ない物を聞かれるときもある。


そして、自分がほしい答えが出ると哂うのだ。


自分のほしい答え…そう、山崎自身はこのことの答えを知っているくせに俺に聞くのだ。
そして、俺が答えられない時、間違いを言った時に、まるで母親のような口調で、俺に向って言う。
「おきたさんは、きれいですねぇ。」と。


最近、そういわれることが多くなった。
1年位前なら、5回に1回は「沖田さん、大人になりましたねぇ…」といわれて、山崎をびっくりさせていたのに。
ここ半年、俺は山崎のほしい答えを出せていなかった。


それは、別に答えを出せたからといって山崎が振り返るわけでも、俺が大人になるためでもない。
プライドの問題なのだ。
山崎がほしい答えすらわからない俺を、俺は許さない。


「おきたさん?」


声をかけられて、現実へと帰ってくる。
思考を遠くへ飛ばしていた自分に叱咤をし、先ほどの問いの答えを考える。
質問は確か…


「世界を自分のものに?」
「えぇ、じぶんのものにするには、どうしたらいいのでしょうか?」
「……」


考え始めたらキリが無い。
そんなもの、答えは無いようで無限にある。
しかし、山崎退の中で、答えは一つしかない。


きっとそれは「世界は自分のものにならない。」


だけど、今回は正解じゃなくて、山崎をあっといわせたかった。
そんな時の山崎の反応を見て見たい。
新しい言葉が、聞きたかった。


しかし、どうすれば世界は自分のものになるのだろうか。
新しい世界を作れば、それはその作った人間のものになるだろう。
しかし、破壊しかしてこなかったそれは、俺らには無理だ。


人殺しと破壊と、破滅しかしてこなかった山崎には、できない。
そこで俺は模範解答以上の答えにたどり着いた。
そしてそれを、とっさに、口にしてしまった。


「壊せばいい。」


「は?」


「全部壊して、殺して、一人だけ生き残ればいい、そうすれば、ここはおまえのせかいだ。」


山崎はボーっとしていた。
こんな反応は初めてで、俺は心の中でガッツポーズをした。
真選組最年長の男をここまで黙らせられたのだ、少し気が抜けていたのは許してほしい。


「…すごい、おきたさんすごい!」



こ     れ  で
  せ      か  い が

       ひ じ   かた  さ    ん の も  のだ !!




飛んできたクナイは、綺麗に俺に刺さった。







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インターバルみたいな。






2008/08/18