閉鎖空間
窓の無い部屋に居ると、人間は感覚と言う物を無くすらしい。
山崎は、この話を聞いたとき鼻で笑っていた。
時間がわからないくらいでだらしない、俺はこうはならない。
しかし、山崎は今それを猛烈に後悔している。
窓の無い部屋、時計なんてかかっていない。
最初の三日間は圏外ながらも携帯が動いていたが、もうその頼みの綱もなし。
山崎は、完全に孤独だった。
しっかり毎食食事は出るし、部屋にはちゃんとトイレもベッドもある。
しかし、窓が無いだけで、ここまで精神的におかしくなるとは思っていなかったのだ。
山崎には、すこし驕りがあった。
監察を長年やっている自分なら、この状況に陥っても何とかなると思っていたし。
拷問にかけられなれている自分なら、機密事項は何も喋らないことも可能だと思っている。
しかし、目的もわからずにただひたすら閉じ込められるのは山崎の予定外だったのだ。
「…何日たった、俺がここに来てから。」
もうほとんど枯れてしまった声で問えば、門番は山崎を一瞥した後それを聞かなかったことにしてただ立っている。
ずっとこんな調子だ。
捕まえた本人すらここには来なかった。
「ねぇ、教えてよ。」
こんどは、門番は振り向きもしなかった。
まるで、そこには何も居ないかのように振舞うのだ。
それが山崎にとっては悔しくて悔しくてたまらない。
「おい。」
殺気を帯びた声を出せば、門番はびくっと肩を振るわせた。
どうして、だ。
脅えているのに、山崎に対して確実に脅えているのに、門番は全くその言うことを聞かない。
普通、脅えている相手には従ってしまう。
と、言うことは。
こいつを雇っている人間の方が怖いと言うことになる。
山崎はちっと舌打ちをすると、また布団へもぐりこむ。
眠るわけではない。
ただ、悔しくて不貞寝をしてやろうと思っただけなのだ。
ここ数日の放置で、山崎は自分の心が疲れているのを感じていた。
「おい、起きろ。」
ばさっとバケツで水をかぶせられる。
山崎は冷たさに身震いをすると、すんなり起き上がった。
寝ては居なかった、ただ、ボーっとしていただけなのだ。
「高杉殿がお呼びだ。」
とうとう、ボスとの対面だ。
山崎は手に汗をかいていた。
いままで自分を放っておいた人間はどんなやつだか、興味もあるが恐怖もある。
牢を出ると、そこには大きな窓があった。
真っ暗闇にぽつんと月が輝いている。
満月は捕まった日の5日後のはず。
この月なら、10日近くたっているはずだ。
山崎がそう推測している間に、大きい扉の前へ通された。
立て札を見れば、入室禁止と書いてある。
山崎は息を飲むと、その扉を開けた。
「遅いじゃねぇか。」
山崎はその一声で、体中の力が抜けるかと思った。
まるで威嚇でもしてくるかのような気だ。
なのに、口調は穏やかなのだ。
なぜ、誰もこの悪意に気が付かない?
山崎がパニックを起こしていると、ここまで山崎を連れてきた連中の首が飛んでいた。
さすがの山崎でも、それに少し驚く。
血まみれになった雇い主は、浅く笑う。
「おせぇんだよ。ぐずぐずしやがって。」
刀を一振り。
そこから飛ばされる血が山崎を彩っている。
顔が強張る。
「…高杉…晋助…」
「山崎か。確か幕府の狗だっけな。」
喋るたびに、その殺意が山崎を捕らえる。
高杉が喋ると、その度に山崎は殺された気分になるのだ。
「監察…ってことは密偵か?」
「…か、んけい、ないだろ。」
しどろもどろにしか出ない言葉に、山崎はイラついていた。
聞きたいことは山ほどある。
できるなら、この場で殺してしまいたい。
「いい殺気してんじゃねぇか。」
「っ…は?」
「気配は感じすぎるくらいだ。」
「な、にを…」
気に入った。
高杉はそう言うと、殺気をゆるめた。
その重圧からいきなり開放され、山崎は死体の上にひっくり返る。
身体は脂汗まみれだ。
「な、なんだっていうんだ!」
「だから、おまえを開放してやる。だから、もう一回俺を殺しに来い。」
「なんでそんな…今、俺を殺せばいいだろう!」
「そんなんじゃ面白くねぇ。だから、一回逃げろよ。」
だがな、何処までも追いかけてやるよ、退。
耳元で囁いて、高杉は部屋を去った。
山崎はただ、高杉が座っていた場所を見つめることしか出来なかった。
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高杉が変態だといい(いきなり
たのしくおいかけっこをする二人に萌えます。
そろそろ銀魂のネタが無いですよね。
つか山崎受けを書きすぎたww
なんかちがうの書こうかなぁ…